サンゴの産卵
キーワード:満月・月光・一斉産卵・同調産卵・環境刺激・光受容体
私たちの研究成果
サンゴは初夏の満月の時期に同調して一斉に産卵します。ヒトは満月の時期を月の満ち欠けにより把握できますが、サンゴはそうはいきません。では、サンゴはどのように満月の時期(月齢)を把握し、産卵日を同調させているのでしょう?私たちは、海外の研究グループとの国際共同研究により、以下のことを明らかにしました。
1)フィールドで月光を遮光すると、産卵日が早くなること。
2)夜間の光が産卵を抑制すること。
3)夜間の光の産卵抑制効果は、夜間の光が昼間の光と連続しているときに有効であること。
4)昼間と夜間の光の間に、光のない暗い時間帯(光のギャップ)があると、夜間の光の産卵抑制効果が失われること。
月の出時刻は毎日約50分ほど遅れます。そのため、ひと月のある日を境に、「月の出」は「日の入り」の前から後へと逆転します。その日というのが、満月の日。つまり、満月の日以前は、太陽光と月光は連続しており、その場合は産卵は月光により抑制されます。しかし、満月の日以後は、太陽光と月光の間に光のギャップが出現します。我々の研究により、その光のギャップの出現こそが、産卵日を同調させる合図となっていることを明らかにしました(論文1)。
今後はなにを研究するの?
満月の時期に同調産卵するサンゴ種は多く存在し、種間で産卵日が異なります。また、満月の時期に同調産卵するのはサンゴだけでなく、魚などでも見られることがあります。今後は、「産卵の合図」の普遍性と多様性について明らかにする必要があり、すでに研究を始めています。また「産卵の合図」がどのように産卵を誘導するかを理解する必要があり、「産卵の合図」によってどのような遺伝子の発現が変化するのかに関しても研究を始めています。これらの研究は、台湾やドイツの研究者らとの国際共同研究として進めています。
参考論文
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Lin CH, Takahashi S, Mulla A, Nozawa Y (2021) Moonrise timing is key for synchronized spawning in coral Dipsastraea speciosa. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 118 (34) e2101985118.